アレルギーの子供たちに安心して食べられる喜びを届けたい

――――次にハートライフ病院の小児科の特徴や主な業務について教えてください。

崎原

当院の小児科では2次医療機関として診療所などからの紹介患者を中心に診療を行っています。また、外来部門であるハートライフクリニックからの入院を含め、3名の医師が連携し感染症などの一般的な疾患、予防接種、小児の手術の術前診、術後管理を行っています。当院で出生する新生児の管理や1ヶ月健診も行っています。

城間

私も小児科の研修中に、帝王切開で生まれた赤ちゃんの最初の蘇生を手術室で先生と一緒にやらせてもらったのは感動的でした。

安木

そうだったね。赤ちゃんって、お腹の中には空気はないので、最初はみんな呼吸してないで生まれて来るからね。

崎原

最初に声を上げて泣いた時に初めて呼吸をするんだよ。

城間

はい。すごく貴重な体験でした。

崎原

小児科では他にも中城村や西原町、与那原町などの近隣市町村の乳幼児健診や、西原小学校と中城小学校の校医、保育園の園医の活動を通して地域の小児の健康管理への貢献も目標としています。

金城

近隣地域の子供たちの「見守り隊」みたいな感じですよね。

安木

そうかもしれない。

――――あと、もうひとつの特徴が「小児アレルギー外来」ですよね?

崎原

そうですね。毎週月・火・木に診療するアレルギー外来では、小児の食物アレルギーの診断・治療を中心に行っており、ほかにも薬剤アレルギーの診断や、看護師や栄養士と共にアトピー性皮膚炎等のスキンケアや食事療法指導なども実施し、毎週水・金は病棟で食物経口負荷試験を行っています。

城間

研修では少しだけですが、アレルギーについても学びました。アレルギーの人って増えているんですか?

崎原

世界的には2000年代から食物アレルギーの患者さんが増えています。

金城

うちのアレルギー外来には1日に10~15人ぐらい患者さんが来ますね。

崎原

そうだね。卵アレルギーが多く、過半数を占めています。

城間

アレルギー外来ができたきっかけは何だったんですか?

崎原

私が2012年にこの病院に赴任してから、地域の乳幼児健診などに参加する機会が増え、その中で食物アレルギーやアトピー性皮膚炎に悩むお子さんやご家族がとても多いことに気づきました。

安木

ちょうど10年前ですね。

崎原

それで2015年度にあいち小児保健医療総合センターでアレルギーについて研修を受ける機会をいただき、そこで培った経験を基に2016年度から当院にアレルギー外来を開設したんです。

安木

崎原先生は牛乳アレルギーについての乳児向けの研究で、新しいエビデンスも発信していますよ。

城間

すごい!どんな研究なんですか?

崎原

県内4つの病院(ハートライフ病院、沖縄協同病院、那覇市立病院、琉大病院)による共同研究で、2017年から2020年にかけてスペード試験(SPADE study)を行い、「生後1か月から3か月までの2か月間、ミルクを少量(最低10ml)でもいいのでできるだけ毎日摂取すると、牛乳アレルギーの発症が約1/10に減らせる」ことを米国アレルギー学会誌で発表しました。

安木

崎原先生はアレルギー外来の経口負荷試験も含め、より実践的に具体的な食品の量とか時期も明示して、しっかり道筋を付けてくださっています。私達が治療をする場合にも、これを目安にできるので本当に助かります。

崎原

治療をしている食物アレルギーのお子さんが安全に食べられるようになり、学校で友達と同じ給食を食べられるようになったと喜んでくれることがやりがいです。そのためになら頑張れるかな。

金城

私も将来は崎原先生のようにアレルギー診療ができたらいいなと思っていて、専門医を目指しています。

病棟での食物経口負荷試験の様子。
患者には医師や管理栄養士の付添いのもと、鶏卵・牛乳・小麦等の食物を食べさせて本当に食物アレルギーがあるかどうか、食物アレルギーがあってもどのくらいまでなら安全に食べることができるかを判断する。

子供の患者さんにも親御さんにもていねいに向き合う

――――小児科医として現場で求められる資質はどんなものだと思いますか?

崎原

子供が好きだったら大丈夫。あとは大抵何とかなります。

安木

医師にはコミュニケーション能力が必須ですが、小児科医は特に「説明する力」が大事だと思っています。患者さんであるお子さんのために、医師も親御さんもチームで医療に取り組んでいくことが重要だからです。

金城

小児科医は「患者目線」が大事だと思っています。話ができる3~4歳ぐらいの子なら、大人の患者さんと同じような目線で診療できると思っています。「診察するね」「これから検査するよ」など、本人に声かけや話しかけをして、子供であってもちゃんとインフォームド・アセントを行うことを心がけています。

――――なるほど。子供の患者さんにも医師としてきちんと接するいうことですね。では逆に3人の先生方から城間先生に聞いてみたいことはありますか?

金城

城間先生は今後どんな医師を目指していきたいですか?

城間

優しくて信頼できる医師です。そのためにはコミュニケーション能力が大事だな、とこの半年間で痛感しています。

安木

確かに大事だよね。

城間

大学時代は目上の方と話す機会が少なかったのに、医師になったら急に上の先生方と話さないといけなくて焦りました。

金城

ゆっくりでいいと思いますよ。

城間

研修医の話をしっかり聞いて、目を見て話してくれる先生はいいなと感じたので、私もそうなりたいです。

崎原

小児科研修でやって欲しいことや聞きたいレクチャーなど、何か希望はありますか?

城間

患者さんがいる時は実践でいろいろと教えていただけたのですが、今年は患者さんが少なく、具体的な質問があまりできず残念でした。

崎原

確かに。コロナ禍で入院患者もだいぶ減っているからね。模擬症例のカンファレンスはどう?

城間

そういうのがあると質問もしやすいです。

安木

小児科を選ぶ際にためらってしまうポイントを研修医の視点から教えて欲しいです。例えば親御さんが怖い、子供が診察しにくいなどは聞いたことがあるんだけど。

城間

小児救急のある病院では腰椎穿刺や採血ができないといけないのですが、私は手技の経験が浅く自信がありません。

安木

小児科でそれをやるのが怖いということだよね。

城間

はい。手技系は苦手で難しいです。

安木

手技は1回目は見て、2回目以降は実際に研修医がやるんだけど、腰椎穿刺を行う髄液の検査みたいなものは数自体が少ないので、なかなか経験してもらえないんだよね。

崎原

ハートライフ病院は研修医の希望に柔軟に応える病院なので、例えば「小児科でもう1か月研修を受けたい」と希望したら叶うことが多いよ。苦手な手技を克服してみて。

城間

そうなんですか。検討してみます。希望に応じて臨機応変に対応してくれる病院っていいですね。別の病院で研修している大学の同期もいますが、たぶんハートライフ病院の方がいろいろと融通が利くだろうなと感じています。

担当する小児科の前に集合する、左から金城優美先生、 崎原徹裕先生、安木大地先生。たとえマスクをしていても、表情やしぐさに優しいオーラがあふれている。

悩んだり迷ったりしたらいつでも小児科に遊びに来て欲しい

――――これから医師を目指す医大生や研修医の先生方に、ご自分の体験を踏まえたアドバイスやメッセージをお願いします。

安木

人間やりたいことは頑張れます。だから好きなところに進んでもらうのが一番だと思います。また、どの科を回る時も興味を持って楽しんで欲しいですね。どこの科に行ってもすべての科と関わりながら仕事をするので、いろいろな科のことを知っていれば必ずどこかで役に立つと思います。

金城

私が学生の時に言われたのは「ロールモデルを見つけたらやるべきことや進路がわかりやすいよ」という言葉。私の場合、ハートライフ病院で働いている先輩の先生方がロールモデルですね。日常の診療の中で、隙間時間を使って先にできることはやっておくなど、どの先生も仕事が早くて時間の使い方がうまいんです。とても全部は真似できませんが、できることはお手本にしています。もし、ロールモデルが見つからなくても、いろんな先生のいいところを少しずつ取り入れていけば、何をすべきか見えて来るはず。

崎原

最近は研修医全体の数や小児科を回ってくれる研修医も増えています。みなさん私たちが研修医の頃に比べて本当に真面目で、何にも心配する必要はないと思います。研修の中で好きなことを見つけてくれるのが一番。もし、悩んだり迷ったりしたら、いつでも小児科に遊びに来てください。話を聞きながら小児科に勧誘します(笑)。

城間

コミュニケーションが元々苦手で難しさを感じてしまいますが、自分なりに頑張ります!ハートライフ病院には心強い先輩たちが多いので、研修中にいろんな先生方と話して克服したいです。

崎原

小児科にも来たらいいよ。

金城

ぜひぜひ!!

「手技が苦手で」と不安げに採血を行う城間先生。「大丈夫、ゆっくりでいいよ」と優しく指導する金城先生。みんな研修医時代を経験して、たくましく成長していく。
ハートライフ病院

ハートライフ病院に興味をお持ちいただけましたか?

当院では随時病院見学を受け付けています。少しでもご興味をお持ちの方はぜひ見学へお越しください。
雰囲気を肌で感じ、職員の働く姿を見ることでハートライフ病院への理解も深まると思います。 研修医、スタッフ一同、心よりお待ちしております。

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