LIFE No.08

研修医の心身の健康を第一に考え、
病院全体で育てるハートライフの
初期臨床研修

今回のドクターズ・スペシャルトークは呼吸器内科をフィーチャー。
過去に猛威を振るったインフルエンザをはじめ、新型コロナウイルスの際もいち早くマニュアルを作成し、患者さんの治療だけでなく、院内感染を広げない対応を心がけてきました。
肺がんなど終末期の緩和ケアでも、患者さんに寄り添った治療を行っています。
呼吸器内科部長である普天間医師は初期臨床研修医の研修委員長として研修医の学びやすい環境整備やプログラム作成にも力を注いでいます。

LIFE No.8

研修医の心身の健康を第一に考え、病院全体で育てるハートライフの初期臨床研修

今回のドクターズ・
スペシャルトークは呼吸器内科
過去に猛威を振るったインフルエンザをはじめ、新型コロナウイルスの際もいち早くマニュアルを作成し、患者さんの治療だけでなく、院内感染を広げない対応を心がけてきました。肺がんなど終末期の緩和ケアでも、患者さんに寄り添った治療を行っています。呼吸器内科部長である普天間医師は初期臨床研修医の研修委員長として研修医の学びやすい環境整備やプログラム作成にも力を注いでいます

Member Profile

新垣 珠代 医師

那覇市出身。42歳。琉球大学医学部卒。2011年3月、ハートライフ病院初期臨床研修修了。同年4月、ハートライフ病院呼吸器内科へ入職。2015年4月~2016年3月、国立病院機構沖縄病院にて研修。2015年4月よりハートライフ病院呼吸器内科勤務。呼吸器内科副部長。医師14年目。

普天間 光彦 医師

与那原町出身。57歳。琉球大学医学部卒。2002年4月、ハートライフ病院呼吸器内科へ入職。睡眠時無呼吸症症候群(SAS)外来も担当。日本呼吸器学会インフェクションコントロールドクター。医師33年目。2019年4月よりハートライフ病院副院長に就任。呼吸内科部長、7階病棟医長および、初期臨床研修医の研修委員長を兼任。

仲吉 博亮 医師

那覇市出身。39歳。琉球大学医学部卒。2014年3月、ハートライフ病院初期臨床研修修了。同年4月、ハートライフ病院呼吸器内科へ入職。2018年4月~2019年3月、中頭病院にて研修。2019年4月よりハートライフ病院呼吸器内科勤務。呼吸器内科副医長。日本内科学会認定内科医、日本内科学会指導医。医師11年目。

研修病院との出会いも専門科の選択も意外性があるからおもしろい

――――今日はご自分の研修医時代や新人時代を振り返っていただき、現場で感じたことなどを気軽にお話いただけたらと思います。まずは初期臨床研修でハートライフ病院を選んだ理由や印象深いエピソードなどを教えてください。

普天間

私の若い頃は研修医制度がなくて、いきなり病院に入職でした。

新垣

そうだったんですね。私がハートライフを選んだのは、コメディカルや病棟の雰囲気が良くて、いい印象を持ったから。看護師さんがとても優しかったんですよ。

仲吉

わかる!優しいですよね。

新垣

その頃は腎臓内科に興味があったんですが、ハートライフには腎臓内科がなくて。その点は迷いましたが、「将来的に腎臓ばかり診るなら他の疾患を診るのもいいかな」と思って研修に臨みました。

仲吉

僕は当時、仲の良かった大学時代の軽音楽部の先輩がハートライフ病院にいて、「楽しいからおいでよ!」と誘われたのがきっかけです。元々住んでいたところから近くて引越さなくていいのもよかった。

普天間

近いって大事だよね(笑)。

仲吉

はい!(笑)

普天間

私もハートライフ病院に大学の派遣で来てたんだけど、入職しようと思った一番の決め手は家に近かったから。家から車で10分でした。

仲吉

そうなんですか。

普天間

那覇の病院へ通っていた頃は、出勤に1時間もかかって大変だったからね。ところで、2人が研修医時代に印象に残った症例や経験はありますか?

新垣

1年目の4月に消化器内科を回った時です。医者になりたてで何もわからなくて、いつもなら上の先生に付いて回っていたんですけど、ちょうど先生がいない時に内診した患者さんがいたんです。膵がんの方で、「自分の余命はどれくらいか?」といきなり聞かれて衝撃を受けました。

仲吉

膵がんは進行が早いですよね。

新垣

そう。深刻ながんということもあるし、学生時代って患者さんの予後については勉強していなくて、自分の中に答えがなかったんです。それをそのまま患者さんに伝えて「ただ、日々わかっていくことがあったら答えるし、質問してもらったら調べて答えます」ぐらいしか言えなかった。ちゃんと答えられなかったのが苦しくて、医局に帰って泣いてしまったんです。それで「自分にはがんを主体的に診るのは向いてないな」と判断して、やっぱり腎臓内科に行こうと思いました。

仲吉

苦しい体験ですね。

新垣

ところが、2年目で普天間先生の下で研修を回った時に、肺がんの末期というか、進行期Ⅳ期の患者さんを担当して、意識がガラッと変わったんです。

普天間

え、そうだったの?どの患者さんの時だろう。

新垣

ずっと仕事を頑張ってきて、定年退職した矢先にがんが見つかって、しかも進行期で血栓ができていたんです。

普天間

ああ、思い出した。あの方だね。

仲吉

これからやっと第二の人生が始まるのに、ショックだったでしょうね。

新垣

すごく寡黙な方で、担当になっても最初はなかなか話してくれなかった。できるだけ病室に行くようにしたら、少しずつ心を開いてくれたんです。「引退した矢先に見つかるなんて俺の人生なんだったんだろう」って話してくれて。悲しくなって一緒に泣いてしまったんです。その時に、「泣く医者がいてもいいかな」という気持ちになれました。

仲吉

うーん。自分ならどうするだろう。

新垣

ちょっと頼りないって見る人もいるだろうけど…。

普天間

患者さんによって変わりますね。支えて欲しい方も一緒に共感して欲しい方もいる。みんな同じではないので、そこは難しいところでもあるね。

仲吉

でも、一緒に泣いてくれる先生がいてもいい、ってことですよね。

普天間

そう。それは全然いいと思う。確かその患者さん、他の病院に転院した時に「新垣先生が良かった」って話をされていたはず。

仲吉

うわー。それはうれしいですよね、医師として。

新垣

うん。ただ、その時はまだ研修中だったので、治療半ばで私は他の科を回ることになったんですけど。この時の経験があって呼吸器内科に進むことを決めたので、とても印象深い出来事でした。うちの病院の呼吸器でがんと診断された方の中で、うちに通院や入院をしている方は、手術適用はない患者さんなので、比較的がんが進行した方を担当することになる。その方の人生に寄り添って、最初から最期まで一緒にがんを診られるところに魅力を感じました。

仲吉

えっと、僕のエピソードは逆に失敗した話で…(汗)。

普天間

いいんだよ。失敗もまたいい勉強です。

仲吉

2年目の半ばに救急当直をしていたら30代の方が「頭が痛い。めまいがして、吐き気がしている」と運ばれてきたんです。その患者さんは、最終的には「椎骨動脈乖離の破裂」という診断にはなったんですが、当時の僕はそれを初診で疑うことができませんでした。翌日以降も先輩や周囲の先生に話を聞いて、結局は「この診断は難しかったよ」と言ってもらったんですが、もし同じ症例の患者さんが来て、「また見破れないのか」と考えたら怖くなりました。

普天間

病気の発症には必ず何かサインがあるはず。それを見落としているんだよね。

仲吉

はい。それで研修医の教育指導に来ていた群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春先生に、「どこで頸椎動脈乖離が疑われたんでしょうか」と相談をしてみたところ、先生は僕が症例の説明をした時のたった一言で病気をすぐに見破りました。

新垣

どんな言葉?

仲吉

「急に」です。患者さんが学校でコピーを取っている時に急に頭痛とめまいがした、という経緯を話すと、安田先生は「それは突然発症なのでMRIを撮らないとダメです」とおっしゃって。紛らわしい要素があっても、「突然発症は絶対に血管病変を最初に疑い、除外しなければなりません」ときっぱり。この経験が基本をおろそかにしない教訓として僕の中で生きています。

――――仲吉先生、普天間先生が呼吸器内科を選ばれた理由を教えてください。

仲吉

感染症が好きで、初期診療で感染症を診て治療をしたかったんです。ただ、当時の感染症内科は治療以外にも、院内全体の感染管理や個々の症例の相談、難治性症例のコンサルテーションなども求められていました。その点でいうと、呼吸器内科の方が初期診療で感染症に近いところに関われるんです。それでサクッと決めてしまいました。

普天間

2人ともそうだよね。全然そんなそぶりも見せずに、初期臨床研修の2年間が終わる前になって「あ、先生、呼吸器内科に行きます」って感じでね(笑)

新垣

そうかも(笑)。そういえば普天間先生から「呼吸器内科に来たらいいよ」って言われたことないですよね。

仲吉

確かに。強引な勧誘はしませんよね。

新垣

前に「基本的にキツイ科だから自分から来たいっていう人以外は誘わない」って言ってましたよね。

仲吉

でも、キツイけどメリハリはある。

普天間

決して手は抜けないけれど、頑張れば患者が助かるというやりがいはあります。

仲吉

確かに。感染症内科って顕微鏡をのぞいたり、検査結果を見たり。実際に何かが起こっているところを直感的に見ることや評価することができて、それに対して仮説を立てて治療を行うと治る、っていうことが気持ちいいんだと思います。

新垣

普天間先生はなぜ呼吸器内科を?

普天間

実は最初から呼吸器に興味があったわけじゃなくて研究がしたくて、大学で研究が一番しっかりできるところが第一内科という呼吸器だったので、そこを選んで大学院に進みました。

仲吉

え、じゃあたまたま?

普天間

そう。子供の頃の夢がノーベル賞を目指すことだったんで、とりあえず目指してみようと思って。

新垣

え~っ!そんなこと考えてたんですか?

普天間

だって、やらなきゃわからないじゃない?やってみて初めて「あ、無理だな」ってわかるわけで。

仲吉

ワッハッハハ。すげえ~(笑)。

新垣

いやー、おもしろい。

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