患者さんの訴えには必ず理由があるそれをしっかりと聞き、誠実に診療にあたる

――――診療を行う上で心がけていることはありますか?

仲吉

「患者さんの訴えには必ず理由があるはず」と思ってしっかりお話を聞くように心がけています。

普天間

そうだね。やっぱり「誠実に」ってことかな。

新垣

大事ですね。

普天間

もう1つは「ブレない」ってことだね。

仲吉

なるほど。

普天間

ナースたちから聞いたんだけど、「患者さんって研修医の言うことはあんまり聞かないのに、普天間先生の言うことは聞くんですよ。なんでかねー」って。だから「貫禄かねー」って冗談言ってたんだけどね。

仲吉

それは絶対ありますよ。ブレない人の言葉には自信を感じます。

新垣

私は外来でも病棟でも、患者さんとの距離感や、患者さんの反応を見ながら言葉を慎重に選んでいます。どこに不安を感じているのかな、今の説明はわかってなさそうだな、とか常にアンテナを張ってますね。

普天間

患者さんとの距離感って難しいよね。

新垣

はい。すごく丁寧にしたほうがいい人と、一から十まで話したら不安になる人がいますよね。

普天間

話を聞きながらゆっくりゆっくり慎重に距離感をはかって、その人に合わせて言葉を投げかけないとね。

仲吉

そう考えると、医師って“話す”仕事なんですよね。

新垣

そう、めっちゃしゃべる。

普天間

研修医たちは初期臨床研修でそういうことを感じてくれてるかな。例えば入院患者さんの回診の時に、私や他の先生、メンバーたちはみんな、「この患者さんにはこんな接し方で」という共通認識があるんだけど、研修医は少し戸惑ってるところもあるかもしれないね。

仲吉

確かに。「あれ?さっきの患者さんとは話し方がなんか違う」って考えてくれたらいいですよね。

普天間

研修医には「あの患者さんにはこういうことは言っちゃダメだよ」って注意をすることはあります。でも、「なぜですか?」って聞いてくる研修医はまだいないね。治療とは直接関係ないので聞きにくいのもあるし、「なんでだろう?」で終わってるかもしれないね。

仲吉

僕は研修医が付いてくるカルテ回診やグループ回診の時、外来の患者さんが入院する時などは、折を見て研修医に「話の仕方」をレクチャーしています。医学部では医者の話し方は基本的に教えないんですよね。何が失礼で何を気にしなきゃいけないか、本当はすごく未熟なんです。

普天間

みんなどこで勉強してるんだろう。でも、患者さんから教えてもらうしかないよね。もしかしたら未熟さゆえに相手を傷つけてしまったり、文句を言われたりもしながら、何度もやりとりをして勉強していくしかないよね。

仲吉

そうですね。別に診療じゃなくても、例えば気持ちのよい接客を受けた時に、「お、これは取り入れられるな」とか、「言葉の使い方が素敵だな」みたいなヒントはありますよね。

新垣

だからこそ「医療はサービス業」という意識を持たないとね。

普天間

その意識はすごく大事。

仲吉

そこを意識するのとしないのとではだいぶ違ってくるので、僕は「話すこと」は研修医にちゃんと意識させていた方がいいなと思いますね。

感染症対策のスペシャリストとして経験と専門知識を生かす

――――普天間先生は日本呼吸器学会の「インフェクションコントロールドクター(ICD)」の資格をお持ちとのこと。新型コロナウイルスの感染が始まってからこの3年間、感染症を制御する医療従事者として、どのような役割を果たされてきたのでしょうか。

普天間

元々、院内感染対策チームでリーダーをしていたので、コロナの対応も私が中心になって始めました。コロナ以前に2009年にインフルエンザがパンデミックになったのを覚えてるかな?

新垣

はい。私はちょうど研修医の頃でした。

普天間

南米から始まった怖いインフルエンザが沖縄にも来て、その時は私1人だけで対策をしたんですよ。患者対応も含めて。

仲吉

え、1人で?

普天間

そう。その時に対策を徹底した経験があったので、コロナの時も心構えはできていました。院内の対応マニュアルを早々に作成して業務を流す仕組みは作れていましたが、患者数自体はとんでもない数に膨れ上がりました。

新垣

最初のすごいピークの時は医局もダメージがありました。

仲吉

院内感染が出てしまった時ですよね。

普天間

途中からは内科の秋元副院長や外科の西原副院長が構成した対策チームができ、私は現場に集中できました。以前のインフルエンザの爆発的な流行に比べると今回のコロナはそこまでではなかった気がします。

仲吉

でも、まさか3年間も続くことになるとは…。

普天間

それは本当に想定外だったね。

仲吉

コロナで一番大変だったのは、隔離病棟で入院患者の対応をしていた看護師さんです。ドクターがどれだけ助かったか。

普天間

現場は本当に大変だったと思うよ。

新垣

あとはうちの病院って入院患者さんは個室なので、感染の広がりは他の病院よりは小さかったはず。

普天間

院内感染対策メインの看護師チームが、いつも付きっ切りでケアをしていたので、私は何かあればすぐ飛んで行って、対策を立てていました。職員を休ませないといけないという混乱はあったけど、判断は絶対に迷わないようにして必死で乗り切りました。そのうち他の先生方も対応に慣れて手伝ってくれて。ナースのマニュアルは私たちで作り、医師のマニュアルは救急の先生方が作ってくれました。

新垣

夜間救急で熱が出た患者さんの対応マニュアルもあり、迷いなく業務にあたることができました。

隔離病棟では、看護師は個人防護具をまとい過酷な勤務に就いていた。

――――ハートライフ病院では、特にどんなことに留意してコロナ対策を行っていますか?

普天間

「職員や入院患者に広げない」を一番に考えていて、そのための教育を行っています。まずは行動マニュアルを作り、「患者を診る時にはサージカルマスクの着用や手指衛生の徹底、手袋の装備など、こんな対応をしたらうつりません」と伝えて、現場が安心できるようにしました。

新垣

普天間先生が現場でコロナの対応に追われている間、最初の半年ぐらいは私と仲吉先生はそれ以外の呼吸器内科の外来や入院病棟のことを診ていましたね。

普天間

私が手一杯だったのでだいぶフォローしてもらいました。入院病棟には肺がんの患者さんや通常の呼吸器疾患など、コロナ以外の患者もいますので。

――――こうしたコロナの対策から学んだことはありますか?

普天間

わかったことは、ほかの感染症患者も減ったということ。

仲吉

やっぱり手洗い、うがいの効果ですね。

普天間

特に手洗いだね。最初の2年間はインフルも流行らず、「感染者は減らせるんだ」という確信が持てたのがひとつ。それと、院内で他の菌を追跡調査した結果、院内感染も減りました。手洗いでこんなに感染症が減るという検証ができたよね。

新垣

あとはSNSなどでデマや間違った情報が広がりやすかったこと。予防のためのワクチン接種の時も、「打ったら5年後死ぬんですよね?」って一般の人に聞かれました。

普天間

え?まさか。

新垣

そういう公衆衛生的な理解や発信って一般の人は難しいと感じました。

仲吉

僕らドクターだと、正しい情報にアクセスして検証することを生業にしているので迷うことはないですけど、そもそも正しい知識にアクセスができないとか、誤った情報を信じてしまうという人が一定数います。情けないことにドクターでもいます。

普天間

その辺は難しかったね。通常だったら院内でみんなを集めて、「コロナはこんなウイルスでこういう対策をすれば怖くないです」と説明できるのに、コロナで集まれなくて職員の不安を払拭するための対策が充分ではなかった。現場は恐らく不安なまま仕事をしていたと思います。私はその前にインフルエンザのパンデミックを経験していたので、コロナにはあまり戸惑わなかったんですけど。

仲吉

あと、ここまで広まる伝染病って、そうそうは出てこないはずだから、この経験は病院全体できっと生かせますよね。

新垣

それは絶対にあると思う。

普天間

そうだね。実はインフルエンザの後のSARS、そしてエボラ熱は、実際は沖縄では流行はしませんでしたが、感染症を制御するICDとして、患者の発生を想定して院内でシミュレーションしたんです。宇宙服みたいな防護服でトレーニングもしました。

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