研修医の心身の健康を第一に「無理させない」研修プログラムを実践
――――研修医を受け入れる際に心がけていることはありますか?また、普天間先生はハートライフ病院の初期研修臨床医の研修委員長も務めていらっしゃるとのこと。病院全体としてどのような対応を行っていますか?
「研修医に無理をさせない」ように配慮しています。最近の研修医に「研修の2年間で大事なことはなんだと思う?」って聞いたら、「心身共に健康であること」と返ってくるようになった。そこは理解しているね。昔は「いい医者になりたい」とか、「医者としてこうあるべきだ」みたいな話が多かったよね。
学校で教えてるんですかね?
社会的な常識なんじゃないですか?「潰れないことは大事」っていう。
そうだね。まずはそこがスタート。
うちの病院のプログラムって基本的に無理することはないし、研修医をみんなで気遣う感じですし。
最近はそうでもないけど、最初の頃、研修医は下っ端扱いで雑用が多かったため、なるべく雑用をさせないように意識しています。例えば外来に研修医を入れるとかはしないようにしています。
――――ハートライフ病院では初期臨床研修において、これまで1人も脱落した方がいないとお聞きしました。
はい。脱落はゼロです。
他の病院では結構脱落してるんですか?
みんな頑張ってますよ。沖縄ってどの病院でも研修医制度に熱心で、互いに刺激を受けながら切磋琢磨している感じです。
そういえば私が研修医だった12~13年前は、休暇が正月の3が日だけでした。
うそ~。僕の時は夏休みも合わせて1週間休暇をもらえました。
そう。確か増やしたと思うよ。
えー、いいはず~。
普天間先生たちが一生懸命、整備してくださったおかげで研修医の処遇や環境もだいぶ良くなったんですね。
この10年ぐらいでいろいろ変わったよね。
そうそう。働き方改革じゃないけど、どこの病院もそういう風潮になってきました。
うちの病院は当直明けの午後は半休できるようになってるし、上の先生方が帰らないと下の先生が帰れないから、それも医局会でちゃんと言ってくれます。
私は研修医に、「きみたちが帰ることで制度がみんなに広まるから、ちゃんと帰ってね」って言ってる。
ここまで言ってくれる病院ってホントに貴重です。
――――新垣先生、仲吉先生は研修医を受け入れる際に、なにか気をつけていらっしゃることや心がけていることってありますか?
「構い過ぎない」ってことですかね。普天間先生からの受け売りですけど。
え、構ってあげた方がいいんじゃない?
え~?どういうこと?いつもと言ってることが違う~(笑)。
とにかく普天間先生って、研修医を結構放っておくんですよ。自分でできることはやってもらうみたいなスタンスで。なぜかというと、研修医で一番まずいのが、お客さんになったり、連絡医になってしまうことなんですよね。来た報告をそのまま伝えて自分の作戦が出てこないと、連絡医になりがちなんですね。
確かに。私も普天間先生には結構大胆にいろいろ任せてもらいました。
でしょ?僕が普天間先生に言われて印象に残っているのは、患者さんの症例などについて「まずはどうしたらいいか自分で考えて、私とディスカッションしましょう」って言われたこと。まだ2年目か3年目の研修医に20年もキャリアが上の先生がディスカッションをもちかけるなんて、「絶対やりたい!」って思うじゃないですか。
だって、自分で考えることが大事じゃない?
今ならすごくわかります。特にあの時、一生懸命データや資料を調べた自分の意見がたとえ間違っていたとしても、それをしっかりディスカッションしてくれたのがうれしかったですね。
そういうことの積み重ねが力になるからね。
だから僕も研修医には同じことをやってます!
私が研修医の頃は、「絶対にしてはいけないダメなラインがわかっていれば、基本的には大体のことはやっても大丈夫」って教えられました。今、研修医を受け入れる時に心がけていることは、思い切ってやらせるってことですかね。研修医が何か手技をする時とかは、「どうやるの?」って口頭で確認をして、そのダメなポイントをわかっていると判断したら、「はいどうぞ」って感じでやらせる。それぐらい任せた方がやる気が出ることも体験しているからね。
普天間先生って、本当にギリギリのところまで放っておいて、絶妙なところでツッコミをくれて、ちゃんと手を差し伸べるんですよね(苦笑)。
そう、ちゃんと見てるからね。大丈夫。
いや~、かなり異色の先生ですよ。
視野を広げ、新しい治療やケアを学ぶ他院での研修プログラム
――――新垣先生は2015年から2016年にかけて国立病院機構沖縄病院で、仲吉先生は2018年から2019年にかけて中頭病院で、研修プログラムを受けられていますが、それぞれどのようなことを学びましたか?
沖縄病院では、呼吸器プラス緩和ケアの病棟という形で1年間、研修に行かせてもらいました。呼吸器に関しては、ハートライフ病院で普段やっているものとは結構症例が違いましたね。沖縄病院では、診断が少し難しい間質性肺炎が多くて、それ以外はシビアな状態の肺がんの方でした。だから、研修を受けた1年間は思ったよりも大変でした。
そうだったんですね。
急性期病院で緩和ケアのあるところは少ないので、ハートライフ病院から移った患者さんとか、最初から沖縄病院で緩和ケアを受けた方々が、どんなふうにケアをしてもらって最期を迎えられたのかを見たり、お手伝いできたりしたのはとても貴重な経験でした。あと驚いたのは、患者さんのバイタルチェックのモニターを置かないんですよ。
ああ、そうか。この時期は必要ないかもしれないね。
最初はすごく不思議だったんですけど、一晩に何人か患者さんが亡くなっていくような病棟なので、モニターがあると患者さんの家族がみんな機械ばかりを見て、「そこに居たがらない」というのを看護師さんから聞いて、そうなのかと感じました。
終末期の患者さんには誰か家族の方が常に付き添っていたんですか?
ご家族が付いていたり、あとは病床が20数床なので看護師さんも頻繁に回ってくれたり、集中的に手厚く看護していました。あと、こういった終末期には、患者さん本人のケアや診療だけでなく、ご家族のケアも同じくらい必要だということを学びましたね。
ご家族への心遣いは大事だね。
はい。患者さんが亡くなると、家族の気持ちが置いてきぼりになるというか、虚無感に苛まれてしまうんですね。
「もっと何かしてあげられたんじゃないか」と感じてしまうんですね。
そう。患者さんが亡くなった後も家族のみなさんの人生は続くから「家族も一緒に最期まで頑張った」という意識を持つことが大事。沖縄病院で学んだことは、うちの病院でも生かせると思っています。
確かに。そうですよね。
実はうちの祖母が亡くなった時に、私も自分を責めるような気持ちになりました。
え?そうだったんですか。
うん。「もう危ない」って家族が病院に呼ばれたんだけど、みんなモニターばかり見てて。すごく違和感があったので、家族には「機械は見なくていいから、おばあちゃんと話して」って促したわけ。
新垣先生は沖縄病院の研修に行ってから、肺がんの診療などにすごく強くなったよね。
そうかもしれませんね。仲吉先生の研修はどんな感じだったの?
中頭病院では呼吸器内科ではなく、1年間、感染症内科で研修を受けました。あちらの感染症内科のオーベン(指導医)に付いて、一通りコンサルテーションや感染症対策などの業務について学びました。
お、仲吉先生が一番好きな感染症!
そうですね。指導医に付きっきりで教えてもらい、実際の診療を目の前で見られる貴重な機会だったので、いろいろなことが飛躍的に身に付きました。実は今、ハートライフ病院でAST(抗菌薬適正使用推進チーム)の業務に就いているんですが、そこでも中頭病院の研修で持ち帰ってきたことをみんなにフィードバックしています。
仲吉先生も中頭病院へ行ってだいぶ変わったよね。文献やマニュアルをベースに、しっかりとエビデンスを持って話すようになった。
はい。正しい勉強の仕方を学べましたね。
外部での研修は視野も広くなるし、病院によって異なる薬の種類や治療方針なども広く学べるので、すごく意義深いよね。2人が学んだことをハートライフに持ち帰ってくれたことはすごくありがたいね。今後も頼りにしています。うちの病院は医師やコメディカルの“学びたい”という意欲にとても柔軟だと思います。
それはすごく感じます。
そうそう。院内でも勉強の機会がたくさんあるし、希望を出せば他の科や病棟で学ぶこともできますから。
外で学ぶことでハートライフの良さを再認識することもあるでしょ?
はい。うちは看護師さんがホントに優しいんだと実感しました。
うんうん、そうだよね。
患者さんにもドクターにも優しい!
あと、うちの病院って各科の垣根がなくて、とにかく話がしやすいっていうのもいいところ。
確かに垣根はないね。
医局もオープンタイプで、何科とか分かれてないし。いつもみんなが雑談してるような感じだから、そこにいる他の科の先生に「これちょっと見て欲しいんですけど」とかね。もちろん逆もありますしね。
そうそう。うちはすごくアットホーム。みんな仲がいいよね。
かりゆし会の採用情報
かりゆし会では新しい仲間を募集しています
ハートライフ病院・ハートライフクリニック・ハートライフ地域包括ケアセンターを運営する社会医療法人かりゆし会の医師・看護師・薬剤師等の求人・転職・採用・リクリート情報を掲載しています。