――――――ハートライフクリニックのチーム医療について教えてください。

山本

うちでは朝、オールスタッフミーティングを行っていますね。今ここにいるメンバーの他にも、検査技師やメディカルクラーク、かつては臨床心理士なども参加していました。

新垣

スタッフ間の情報共有は多いです。面談している所で食事のことをちょっと聞くと、「この患者さん、今日はこんなだったよ」って、その患者さんから聞けたことをひとこと伝えてくれます。「運動の時はこんな感じだったよ」とか。そこから話が広がっていくこともあります。なので、できるだけ先生方にも「今日はこんなことがありましたよ」とか。1分ぐらいでササっと伝えます。

山本

それを考えてオープンスペースを作っていて、診察室の裏が抜けられるようになっています。

長嶺

お互いに情報をポンポンと渡せるようになってますね。

新垣

話し過ぎて、怒られる時もありますけど(笑)。

山本

そこで話していることが、診察室にも少し聞こえるようになっていて、栄養士の会話とか、看護師さんのミーティングも聞こえます。リューザのところまではちょっと聞こえないけどね。

長嶺

あい、僕の個人情報も聞かれてないかね(笑)。

山本

患者さんの情報を診療の前にいろいろ知ることができていいよね。

新垣

逆に私たちも先生の診察を少し覗くことができます。そこで患者さんが栄養相談で話されなかった内容を主治医に話していたり、食事の実行内容を報告される方もいます。それで診療の方向性と患者さんの気持ちをわかることができるので、その後の栄養相談に繋げていくことができます。

長嶺

診察の時に、「体組成計の測定の時に、スタッフからアドバイスをもらって、心に響いたので家でやってみました」と患者さんが話してくれたことはよくあります。理学療法士や栄養士、看護師に相談してこういう風にやったとか。スタッフとの短いやりとりで患者さんが一歩を踏み出して、それで継続されているというのはありますね。

久高

何がきっかけになるか、本当にわからないですよね。

山本

そうそう。だから声かけは大事だね。私はみんなを尊敬しているし、それぞれの専門分野で自信を持ってやってくれているので、すごく信頼しています。みんながいるから、うちの診療が成り立っていると思いますね。

―――――互いに信頼し合うチーム医療にハートライフらしさを感じますね。科や職種、上下関係での垣根がなく、誰とでも話しやすい雰囲気がありますよね。

毎朝行われているミーティングの様子
毎朝行われているミーティングの様子

研修医が糖尿病内科で感じた「チーム医療」の大切さ

―――――ハートライフ病院の研修医の先生方は、今期8名中7名がハートライフクリニックの糖尿病内科を回られているとお聞きしました。必須ではないのに、多くの研修医に選ばれているのはどうしてでしょうか?

山本

これはここ数年のことで、その前はほとんど回ってこなかったんですよ。たぶん、科によって食わず嫌いというか、研修医にも余裕がなくて選んでもらえなかったと思うんですね。そんな中で1人の先生が糖尿病内科を勧めてくれて、そのことをきっかけに選ばれるのがだんだん増えてきました。

久高

そうなんですね。

山本

でも、逆に研修医の先生にも聞いてみたいよね、その理由とか感想とか。

―――――研修医の先生方からは、「さまざまな血糖変動を通して血糖管理について実践で学べた」「糖尿病患者に対する関わり方(エンパワーメントやバーンアウトへの対応など)が学べた」「患者さん自身が治療を決定する意識や対話の大切さ」などが感想として寄せられています。

山本

いやー、まさにそうですね。患者さんが主体になって自身の治療を徹底していく、病気を型にあてはめるのではなく一人ひとりに合わせた治療を決定していくということがちゃんと伝わったみたいでうれしいね。久高さんは患者さんへのアプローチが上手だよね。

久高

そうですか?ありがとうございます。私は患者さんのお話をよく聞いて、少し休んでもらって。それから次のことを一緒に考えていく感じですね。がんばれ!と激励するのではなく、穏やかに見守ってあげることを心がけています。

―――――「山本先生が『患者さんが嘘をつかない診察づくり』をしていると感じた」との声もありました。これはどのようなことでしょうか?

山本

患者さんの立場で考えてみると、数値が悪くなると「先生に怒られるんじゃないか」という怖さがあると思うんです。それで病院に行かなくなることもある。だから患者さんに何でも話してもらえるよう、信頼関係を築くことが大事なんですね。

―――――研修医の先生方を受け入れる際に心がけていることはありますか?

山本

研修医の受け入れは、一般的にはガイドラインを読んで検討する流れなんですが、私は研修医の先生に典型的な糖尿病の治療法を教えようとは思ってなくて、その先生が興味のあることを先に聞いて、例えば総合診療でいきたいとか、地域医療に進みたいとか、そういう先生の興味に合うことを重点的に学んでもらおうと思ってやっています。

新垣

それってすごくありがたいです。

山本

その方が学びに意欲的になるはずだからね。

2年目の研修医への指導の様子。山本院長は研修医の興味に合わせて指導している。

―――――ご自分が新人時代に印象に残っている経験(症例)や苦労などをお聞かせください。

新垣

ハートライフに入ってすぐに山本先生に注意されたことがあります。最初の頃は先生が「栄養士の話、よく聞いてるよ」って話していて、本当にカーテンの後ろにいたりするんですよ(笑)。

それで、「何で、あんなに話すの?あそこはだまるとこやで」と言われるんです。厳しい言い方ではないですよ(笑)

山本

そうそう。優しく言ってるよね(笑)。

新垣

その頃から、私の栄養士としてのスタイルが変わりましたね。話すことを控え、患者の話を傾聴する修行の日々が続きました。

長嶺

僕も新人の頃は意気込みすぎて、たくさん話したい、してあげたいという気持ちが強すぎて失敗していました。新垣さんと同じですね。そのことを反省して「患者さんのことを知りたい」というスタイルに変えました。相手が9で自分は1ぐらいの割合。相手の体験や情報をしっかり知ることによって、一番適した運動や内容を伝えられるので効率や効果が高まったと思いますね。

久高

新人の時って「患者さんを脅すなよ」「脅しでは教育をするなよ」って言われていて、それなら患者さんの傾聴に努めようと思ってしっかり話を聞いてから、その間に少し提案をして、患者さんがやる気になってくれて…という感じでした。でも、患者さんが次の診察に来た時に「良くなってるだろう」って勝手に期待しすぎて、変わらないところですごく悶々としたり、心が疲れてダメージを受けたりしました。

山本

そこは難しいよね。

久高

そうですね。患者さんはそう簡単にコントロールできるものではないというのが、だんだんわかってきましたが、それでも提案し続けることはしよう、という想いに変わりました。あとは患者さんのちょっとした変化や変わり時みたいなものがあって、そこには目を向けて、しっかりアプローチするようにしていますね。新人時代とは方法が違ってきましたね。

山本

そうそう。患者さんのタイミングに合わせてね。

久高

チューニングを合わせるというか。

山本

その時がいいチャンスなんだよね。

久高

そうなんですよね。タイミングが合うと変化していくので。

自身の健康と気持ちの切り替え患者さんを支える心身の整え方

―――――ご趣味や特技について教えてください。仕事とプライベートのワークライフバランスはどのように取っていますか?

山本

趣味は人間観察かな。じーっと見て、「あ、この人こんなことしてるんやな」とかね(笑)。

長嶺

あれ?先生、車でぶっ飛ばしてるんじゃないんですか?

新垣

え?先生、運転がお好きなんですか?

山本

そうそう。スポーツドライビングが好きですね。あとは星の撮影かな。とは言っても撮影はお天気次第だし、あくまで体力のある時だけ。

久高

どこで撮られてるんですか?

山本

よく行くのは大宜見村。星空は離島がいいって聞くけど、やんばるも充分きれいですよ。カメラは中古の物で、患者さんの知り合いから譲ってもらってね。

新垣

私は、ショッピングが趣味です。スーパー巡りでは、品ぞろえの特徴や客層などを観察します。たまにかごの中身が見えると「この人は一人暮らしだろうな」「お、今日はカレーかな?うちもカレーにしようかな」とか思っちゃうんです(笑)私のかごの中も見られていると思うんですけどね(笑)

長嶺

僕は休みの日に自転車で四季折々の風景を楽しむのが好きですね。最近お気に入りは泡瀬の海沿いの道。1~2月になると桜並木が満開になるんです。

山本

ハードなスポーツ系の自転車?

長嶺

いやいや、普通の自転車ですよ。車に自転車を載せて平地の所まで行ったり、自宅から乗ったり。

久高

でも、やっぱり運動系なんですね。

長嶺

そうですね。じっとできない性分で。

久高

私も運動するのが好きで、自宅が近いので、仕事が終わって晩ごはんを食べてからジムに行って身体を動かして、それからお風呂と冷水で整えてから1日を終えます。

長嶺

サウナに入ってから冷水ですか?

久高

いえ、サウナじゃなくて、お風呂に入って冷水に入り、すっきりしてから寝ます。あとはジムで顔なじみの人とゆんたくするのが楽しいですね。

山本

健康的な趣味だね。

久高

フフ。そうですね。

新垣

私は食べることも大好きで、太らない努力として、ウォーキングや自転車で海沿いを散策しています。最近はマシーンピラティスを始めて、身体の変化を楽しんでいます。

―――――研修医時代や新人時代は忙しくて趣味の時間が取りにくいと思うんですが、ワークライフバランスの上手な取り方、アドバイスなどはありますか?

山本

昔はホントに休みが全然なくてね。レジデントはずっと病院にいなさい、みたいな感じで。365日24時間勤務で病院の中に宿泊施設があったんだよね。

新垣

24時間いつでも呼び出されるんですね。

山本

そう。それに比べると、今の研修医の先生の方が好きなことを楽しむ時間があるんじゃない?違うかな。

長嶺

まぁ、時代がそうなってますよね。

山本

あとは忙しいのにもそのうち慣れてきて、ONとOFFをバランス良く楽しめるようになると思いますよ。

長嶺

気持ちの切り替えは大事ですね。

山本

そうそう。

―――――医療従事者に必要とされる資質は何だと思いますか?

山本

糖尿病内科の診療スタイルで考えると、医師は1人では何もできません。うちはスタッフが皆、患者さんと同じ目線を持ち、その全体は上から目線ではない医師がちゃんと全体をコーディネートできることが大事かなと思います。

久高

看護師ということで言うと、やっぱり人が好きっていうのと、患者さんを家族のように思ってやっていくことが大事。あとはチーム医療を目指す上では、人間関係を良好に保つためのコミュニケーション能力が大切かなと思いますね。

長嶺

理学療法士も運動指導も含めて、よりわかりやすい運動を実践してもらえるような伝え方や関わり方がすごく大切だと思います。その場限りにならないよう、その内容をまずは自分自身でやってみる。患者さんに「週に150分歩いたら血糖コントロール改善しますよ」と言ったら、まずは実践でやってみて、自分の身体がどう刺激を受け、習慣付けるまでどれぐらいの期間やれば効果的なのか実体験しなければ、本当の運動指導者ではないかなと思います。「患者さんの気持ちになること」を大切にしたいですね。

新垣

栄養士は、食べることが好きで人に興味があることですね。献立を立てる時には、栄養素を満たしていくのは必要ですが、相手を考えた献立作成ができるかが大事です。大量調理では個別化は難しいです。

―――――最後に医療従事者をめざす若いみなさんへ、ご自分の体験をふまえてのアドバイスやメッセージを!

山本

人に興味を持つこと。自分の患者さんに興味を持って“知りたい”と思うことが一番大事だと思います。

久高

自分自身の心と身体を大切にする力が、患者さんの健康を守る力になると思うので、医療従事者がまずは自分自身の健康管理を大切に、そして患者さんを大切にして欲しいですね。

長嶺

久高さん、さすが!自分の健康って大事ですよね。それが土台にあって、人と人とのつながりがあって、周囲への感謝を忘れずにいれば、良い仕事ができるんじゃないかと思いますね。

新垣

医療従事者は、コミュニケーション能力が欠かせません。若いうちに沢山の経験を積んでください。

山本

糖尿病内科で待ってます!

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